第101章

市役所を出てから、大島莉理はまっすぐ家には帰らなかった。

秋の風は骨まで刺すように冷たく、カシミヤのコートをきゅっと掻き合わせる。ハンドルを握ったまま向かう先は田中グループ。

市役所での光景が、頭の中で何度もリピートされた。引き延ばす田中尚哉の、ほとんど絶望に近い意地。加藤柚奈の、諭すふりをしながら刺してくる言葉……。

ふいに思い出す。七年前、二人で婚姻届を出しに行った日の、青くて眩しいほどの喜び。

まるで、別の人生だ。

莉理は目を開け、車窓の外を流れ落ちていく街並みに視線をやった。

七年。

夫婦として重ねた時間は、結局ここまで来てしまった。

田中グループの前で車を停めると、...

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